おはなしコマーシャル

おはなしにコマーシャルをくっつけたら、もっと素敵になりました

目覚ましテーブルライト

 教室の出席パネルに出席登録を済ましてからいつもの後ろ側の席へ向かう。そこの隣にはいつもの友人がスマホに目を向けながら座っていた。

「……よーっす、トーヤ」

 少し眠さから億劫な感じになった。声を掛けるとトーヤはすぐこっちに向いていつものにんまりとした笑顔で返事をしてくる。

「やぁやぁダイスケ君。今日はなんだか気だるげな感じだね」

「やっぱ分かる?」

「なんだか眠そうって感じ」

 奴はエスパーか。もしくは顔面表情判断士の資格を持っているのかもしれない。

「一人暮らしを始めてから夜更かしが多くなってきて朝が辛いんだよ。一人暮らしの先輩としてなんか良い案ない?」

 ここ最近の悩みをあっさり尋ねてみる。こういうときは友人に頼るべきだ。他力本願とも言える。

「学年は同輩だけどね。その問題は僕も始めたての頃はあったなぁ。早めに解決しとかないと体のサイクルが狂っちゃうからね。それでよく遅刻してたなー」

「やっぱりそうなるか……」

 薄々感じてたけどやっぱ砕けた口調の割には真面目だわ。まぁ今はその真面目さに縋っているのだが。

「そんなキミにはこんなのはどーだい?」

 そう言ってトーヤはスマホの画面を見せてくる。

「なになに……目覚ましテーブルライト?」

「そう。正確には目覚ましアラームが付いたテーブルライト。もしくはその逆かな。光の段階が調節出来てカーテンがあっても自然な感じで光を感じられるようになってるんだよ。さらに自然音を意識したアラームもあってさらに爽快な気分に~」

 商品説明が勢いづいたトーヤは喋り続けている。よくもまあそんなにスラスラと単語が出てくるもんだな。意外とお勧め好きなのか……?

「分かった。分かったから後は通販サイトとか見て回ってみるよ」

「……そう?まだ続けられるよ?」

「ほら、もう講義始まるから。な?」

「確かにもうそんな時間かい。ぜひそれ系を買ったら感聞かせてね~」

 そう言ってトーヤはスマホの画面に顔を落とした。危ない、あんな一面が在ったとは……。

 数分後、 聴き慣れたチャイムが鳴り講義が始まる。俺はスマホで通販サイトを見て回っていた。

 数分後、ポチった。

 

「HomLead 目覚まし時計 Wake Up Light 6種類の自然音 アラーム ベッドサイドランプ 3段階調光 タッチセンサー ウェイクアップライト 朝日模擬光目覚まし時計 おしゃれ led 時計 寝室 室内用 テーブルライト」

 朝を気持ちよく迎えるために私たちは眠るのだ。これはそのための一歩である。