おはなしコマーシャル

おはなしにコマーシャルをくっつけたら、もっと素敵になりました

走る

  どれくらい走って来たのだろう。額の汗は止まらずに川の如く流れて行くし、身体中の芯も茹だったかのように熱くなって視界が少しぼやけてきている。

もう相当な距離を進んだように思うけど、まだ見えない。走り続けている心と身体に重い「何か」が圧し掛かる気分がした。

心のどこかで止まれば楽になる、と苦しく囁く声が聞こえる。一瞬で駆け巡ったその考えに姿勢が少し崩れかける。同時に、ここまで頑張ってきた自分に止まるな、走り続けろと激しく責め立てる声もまたそこへ聞こえてきた。負けそうになる気持ちを抑え込むために歯を食い縛り口内の唾を無理やりにでも飲み込む。ただそれだけで、苦しく囁く声は小さくなった。

ひとつの思考に振り回されながらも脚を前に出し続ける。息は既に狂ったメトロノームみたいに不規則に乱れていた。

今度は足がガクガクと震え始める。いつもよりペースを上げてしまっていたのだろうか、それとも、この幾度も続けてきた身体への酷使に対しての反抗なのだろうか。はたまたもっと別の理由か。考える余裕はない。それをどこかの隅に退かして少しペースを落とす。狂ったメトロノームが壊れかけになったかもしれない。

次も、また次も考えては流れていく。だけど、脚は前に出し続ける。

 

 限界ぎりぎりまで使い切って沸騰した身体を軽く動かすことで冷ましていく。それと一緒にそれを口へ一気に含んだ。甘く、適度に塩気のある水が口を潤していく。それまで張っていた身体だけでなく心もどこか緩んでいく気がする。この瞬間を味わうために、次のその次も走っていける気がする。次のその次もとりとめのないことを考えながら。

ポカリスエット

君がいるから僕は次へ進める