昔と今
「これ買って!ぜったい買って!」
レジにぼけっと並んで待っている私にそん会話が耳に入ってくる。聞こえてきたのはまだ幼稚園くらいの女の子とその母親の会話のようだった。
どうやら女の子がお菓子を母親にねだっていてそれを咎められてるのだろう。母親の返す言葉は厳しい。今日の分はもうある、前のが残っている、どうせ残す、とにかく駄目、と成熟した親の主張を並び立てている。いや、最後のはかなり怪しい。そんな大人の交渉に子どもが反論なんて出来るはずもなく、嫌々と首を振りながら駄々をこねるだけになっており、親子舌戦は早くも泥沼の様相を醸し出している。レジにはまだ呼ばれない。
――ほどなくして女の子の方は母親に窘められながら商品を戻すことに概ね合意したようだ。これで第何次か知らないが親子舌戦は終戦を迎えることになるだろう。
そのときその女の子が持っていた商品がたまたま目に入った。「やおきん うまい棒」ではないか。私も子どもの頃はあれが好きだった。そして買ってもらおうと親にねだっていた。そして何度も戻しに行っていた……。
心のどこかになんとも言えない考えが芽生える。あの時とは違い、子どもではなく、お金も持っている。やることは一つ、大人買いだ。
「やおきん うまい棒」シリーズ
選んだ昔、買い込む今。