おはなしコマーシャル

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お弁当

 子供の頃はお弁当の華やかさは正義だった。それだけでなんらかの地位につけるほどの。あの頃のお弁当は華やかさ=人気みたいなもんだった気がする。

 中学生になるとその地位にも革命が起こって男子の中では嘲笑・冷やかしの対象になっていった。心の自立のための反抗期からか母の愛情・熱意といったものはほとんど学校において機能しない。その頃の俺も周りと同じく母の熱意・愛情が込められた弁当よりも普遍的なものが好ましかったし、そのことに寂しさなんて感じなかった。

 高校を過ぎて自炊をするようになり、一人暮らしを始めて自分で弁当を作るようになってからようやく分かった。見慣れてしまった普遍的な弁当を作ってみても母のと同じ華やかさがない。技術ではないもっと別のモノ。それはなんだろうか。

 そんなとき、母から包みが届いた。長かったので要約すると「オモシロイモノが見つけたから送っておくよ、使ってね」ということらしい。それは「まるき らぶおかんのフラッグピック」というらしくデフォルメされたおかんというキャラクターの小さな旗だ。

 作った弁当にひとつそれを挿してみる。思っていたほど目立つものじゃなかった。けど、その台詞があるだけでとても、華やかだと思えた。

 

人の想いは変かもしれない。けど、あるだけで寂しくなくなる。