おはなしコマーシャル

おはなしにコマーシャルをくっつけたら、もっと素敵になりました

ペン

 高校の授業の中、ただ黙々と私はノートにペンを走らせて行く。数分書いて数分説明、半分消してまた書いて説明。この繰り返しだ。内容の話はともかく今はただひたすらに黒板に現れては消えていく文字たちを写さなくては。でないと、それ以降の話が今より聞き流したくなってしまう。

 ペンが紙にこすれる音と黒板とチョークの擦れる音、それに校庭で体育をしている生徒たちの声がふんわり聞こえてくる。この空気は好きだけど嫌いだ。集中出来るけど何かのロボットにでもなったかのような気持ちが湧いてくる。

 チョークが黒板を離れ、ゆっくりとした声が響き渡り始める。ノートの写しはしばし休憩。今回はすぐに写し終えたので大分手を休めることが出来そうだ。

 気になるところを新しく買ったボールペンで下線を引いていく。前使っていたモノとはあまり変わらないはずなのだがなんだか気分が良い。意外と効果あるのかな?思わず頬がにんまりと形作る。

 つい手で転がすようにボールペンを見つめる。普通だ。至って普通のボールペンだ。強いて市販のモノと比べるのならば名前が彫ってある、ということだろうか。

 

「名入れ ボールペン ジェットストリーム4&1 0.5mm 【素彫り】 三菱鉛筆 筆記体 M便」

 名前が刻まれている。それだけで少し心が、躍るのだ。