スーパーフルーツC スパークリング
「ただいまー。……兄貴、今度のそれはなに?」
バイト終わりでくたくたな状態で家に帰ってみたらリビングで兄貴が静かに佇んでいた。パンイチで。何で?
「おう、おかえり。なにって……どう見ても優雅な風呂上がりの一杯だろう?」
絶対違うと思う。万一、そうだとしてもパンイチになる必要は無いと思うんだ。……そう思ったけれど、この人の突発的な行動には言っても伝わらないから諦めよう。もう何回言ったか分からないし。
「……で、そのユウガな風呂上りの一杯とやらはなに?」
「よくぞ聞いてくれた! これは今俺の中で流行っている飲料だ。お前も飲んでみてくれ。布教活動とやらだ。どうせバイト終わりなのだろう?」
そう言って兄貴は同じ飲料を差し出してくる。のどが渇いているのは確かなので貰っておくのに越したことはない。言ってることはまともなんだよなぁ、パンイチじゃ無ければ。
「一応、貰っておくよ」
さてさて、見た目は普通のアルミ缶だ。内容量はあまり見かけない250ml。初めて飲むなぁ。渡されたのは『伊藤園 スーパーフルーツC スパークリング』ってやつ。見たことないな。
さっそくプルタブを開けて喉を潤す。フルーツ系独特の酸味と炭酸の爽快感、それにちょっとした渋味を感じる。
「味は人それぞれだから省くけど、飲みやすくていいね、これ。これくらいの量ならその場で軽く飲めちゃうね。350mlだと飲みきれないことあったから」
「だろう? 俺もその場で飲み切りやすいコレが好きでな。だからこうやって通販で買い置きしてあるのだ」
好意的な意見を貰えたからか、兄貴はさらに宣伝してくる、パンイチで。そろそろ寒く無いのだろうか。
「あーうん。また良かったからさ、バイト終わりの日とかに貰っても良いかな?」
「まぁ、良いだろう。その時はちゃんと俺に一言かけてくれればな」
「はーい。それじゃ」
なんとか脱出することには成功。パンイチ姿を見せられたとは言え、飲料の約束も取り付けられた。まぁまぁな成果じゃ無いだろうか。
リビングから出たあたりで中からくしゃみが聞こえた気がした。
「伊藤園 スーパーフルーツC スパークリング 250ml×30本」