おはなしコマーシャル

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夏祭り

 日の落ちる太陽が映える夏の夕方、それはついに家に届いた。普段着慣れた洋服とは違っていて着る人は少なく、だが夏に見たことは一度はあるあの装い。そう、甚平である。何故、甚平が我が家に届いたか?それはもちろん僕がアマゾンでポチッたからなのだがこれには深くて浅い理由があったりなかったりする。

 元々の発端は一月前、彼女に夏祭りへ誘ったことだった。付き合って二年目ということもあって浴衣の勧めてみたのだ。去年も夏祭りには誘ったのだが彼女は私服だったこともあり密かな目標でもあった。しかし、彼女は中々首を縦に振らず難航していた。

 詳しく理由を聴いてみるとどうやら普段着ない格好をするのが恥ずかしいらしい。それはとんでもない。浴衣がどれほどの価値があるのかを数分ほど力説してしまった。やってしまった。そんな内心諦めモードに入った僕に彼女からひとつの提案がされたのだ。一緒に着てくれるなら、と。

 そして冒頭に戻るわけだ。あのときは勢いで首を縦に振った。だけど今目の前にあると何だか緊張してきた気がする。現代の日本じゃ夏祭りに見るか見ないかというほどのモノだ、普段洋服しか着ない僕にとってある意味新鮮だった。

 当日にぶっつけ本番で着ていく前に着てみて写真でも送ってみよう。それからでも考え直すのは遅くない、と思う。

 初めての和服に四苦八苦しながらも着て、緊張をごまかすために多少のポーズを決めて撮り送ってみる。反応はいかに。

 『ほんとに用意したんだ!?……当日はお互い頑張ろうね』

 思わずガッツポーズを取った。

 

「京都きもの町 綿麻甚平」

 揃えていこう。何事も共に。