ジャム
『子ども達へ……寝坊しちゃったからご飯は適当に食べて行ってね!by母』
朝、朝食を求めてキッチンへ向かったらこんな書置きが残してあった。そして、そのままテーブルの方へ目を向ける。
「おーっす、弟。今日は起きるのが遅かったじゃないか」
兄貴が既に朝食をもっしゃもっしゃと食べ始めていた。テーブルの上にあるのは焼いた食パンとジャムの瓶のみ。実にずぼらである。まぁ俺も大して変わらないけど。
だが、問題はそこではない。問題なのはテーブルの上にあるパンの御供の方なのだ。俺の朝パンのマイフェイバリットであるいちごジャムはたしか昨日の朝のときには残りが少なくなってたはず。そして、テーブルの上には空の瓶と赤いナニカが乗ったパンをモシャる兄貴。嫌な予感がした。
すぐさま冷蔵庫の中を調べる。しかし、無い。あるべきはずのモノがそこには無かった。
「ん? イチゴ探してるのか? 昨日で残り少なかったもんなー」
そう言いながらまだ半分以上ある赤く塗られたパンを食べる手は休めない。叩いてやろうか。
「……他に何がある?」
「バターとブルーベリーとピーナッツと……あとお前が見た方が早いだろ」
どれも圧倒的に甘さが足りない。俺の朝はあの甘さによって迎えられるというのに。……仕方ない、バターにするか。
「ごちそうさんー。しかし、朝から甘いモノはたまにはいいかもなー」
最後の一口を食べ終えた兄貴はそう言ってリビングを出て行った。
(……今日の夜、スマブラで叩き潰す)
バターを塗る。どこか物足りない味を感じながら朝食を済ませる。
メールで母にイチゴジャムを二つ分頼んだ。
それは、時に諍いの始まり。