おはなしコマーシャル

おはなしにコマーシャルをくっつけたら、もっと素敵になりました

ツールカード

「なぁトーヤ、ちょっといいか?」

「なんだいダイスケ君や」

 講義と講義の合間の休み時間。そこで頼み事をするべく俺は親しいと友人と言えるだろうダイスケを訪ねていた。

「ちょっーと聞きたいことがあるんだけど」

「レポートの写しは無しだよ?はい、さよなら」

 彼はそそくさと離れて行こうとする。ちょっと酷すぎないか……。

「違うって!そんなんじゃない。ちょっと服が解れてる箇所があるからハサミとか貸してくれないか?」

「なんだよー。それならちょっと待ってて。最初に言ってくれれば良いのに~」

 曲解していきなり立ち去ろうとしたのはそっちじゃないか、と反論しようと思ったがそれで借りれなくなったら困るのはこっちだ。ここは我慢しておく。

「はいどうぞ」

 そう言って彼が渡してきたのは普通のとは違ってかなり小さい。手芸用のハサミより小さいんじゃないだろうか。

「助かる。それにしてもこれ、相当小さいけどどこにしまうんだ?無くしてしまいそうなんだが……」

「ああ、それはね。ツールカードの一部なんだ」

「ツールカード?」

 知らない単語が出てきてしまってつい聞き返してしまった。そんな俺にダイスケはサクサクと話を進めていく。

「十徳ナイフみたいなモノかな。それをより日常使いに特化してる感じ。大きさも大体クレカぐらいで財布とか入れて置けるんだよ。まるで秘密道具みたいに、ね」

「秘密道具……だと!?」

「そうさ。それはさながらドラマのスパイ工作員かのような……おっともう講義が始まるね。返してくれー」

「お、おう」

 秘密道具……スパイ……素晴らしい響きだ。

 次の講義の最中、俺は通販サイトでポチった。

 

VICTORINOX マルチツール 0.7322.T2 スイスカードライトT2 BL」

 より貴方の身近に。

 

 

 

 

 

ステンレスフッククリップ

 ふー、あとはこの段ボールを仕分ければ一段落かな。

一人暮らしを決意して早半年。ようやく引っ越先が決まってつい先日、ここへ引っ越して来たばかりだ。今日一日は荷物の仕分けに追われていたけど、それももう日が落ちたけど終わりが見えている。

 ん、スマホSNSに連絡が来てる。……どうやら昨日の引っ越しを手伝ってくれた友人からみたいだ。なになに……。

『郵便に引っ越し祝いを入れて置いた。上手く使ってみてくれ』

 いつの間にそんな手の込んだ真似を。とりあえず拝見してみよう。

「セーブ・インダストリー ステンレス製 フッククリップ 5個セット SV-5721」

 これを……どうしろと?いや、使い方は分かる。フッククリップなんだから引っ掛けて挟むだけのはずだ。問題はどこにどう使うか、だ。

 ステンレスなんだから浴室か?タオル掛けに吊るしたりすれば……。他にあるか?部屋の中だと棚の端・取っ手系にも取り付けられるな。逆にすれば何かを引っ掛けるられるようにも出来るか。

 意外と使える場所が多いかもしれないな。『うまく使ってみてくれ』か……もっと使い方を探してみよう。

 夜が更ける。

 

「セーブ・インダストリー ステンレス製 フッククリップ 5個セット SV-5721」

 それはただのピンチにも、モノを映えさせるインテリアグッズにも成れる。

電子辞書

 字を書く、ということは現代の社会では至極ありふれたものだ。大体の子供なら幼稚園に入るころには何かしらの文字は覚えているし、それを綺麗な形じゃなくても書くことが出来るだろう。

 つまり、語彙の差はあれどもおおよその人は文字が書けるものであり、その普遍的な共有財産で個性・思想・意見・情景を写し出そうと考えているのが物書きという人達だではないかと思う。

 だからこそ、物書きは色んな表現を作り出す。見たもの・感じたことをインプットし言葉として吐き出していく。一つの表現をするだけなら子供でも出来る。それを如何に分けて区別して差別して使い分けて利用して並び替えて付け加えて自分の表現したいモノに近づけるか。それは色んなことにも言えるかもしれない。

 なので、気を点けながら色んな表現を探して、使って吐き出し、使い分けられるようにストックするのだ。

 そのために、先人の知識である辞書はきっと必要だと思うのだ。

 

三省堂国語辞典 第七版公式アプリ【ビッグローブ辞書】

 一つの言葉であなただけの表現を。

 

 

 

フローリングワイパー

 重たい、と感じること。それは軽くしたい、という願望が心のどこかに潜んでいるのではないだろうか。

 人は何時だって軽くすることに苦心している。整備のため、使用のためと様々な事柄に結び付けて人のために軽量化をしていく。重たいことが良いというものはそれ自体に意味があるものが多い。動かさないモノ、負荷のため……つまり、人はあまり関係ないと言える。

 だが、それで重いことが悪ではないだろう。重いモノを様々に研究して軽量化することで人は発展してきた。この重たいモノが今の社会を作っている。だから、重たいことは悪ではない。必要なのだ、軽くするために。

 今後も様々な重たいモノが世界には発明されるだろう。けどそれを人の手に収まるように軽くしていく、その結果のために重たいのだと思う。

 あ、これ家電の話ね。

 やっぱり人の手で使うものは軽くないとね。それだけで疲れちゃうよ。色んな機能も良いものだけどやっぱり軽さが大事だよね。

 

「GLOLYY フローリング モップ ジョイントタイプ (本体×超厚いドライシート20枚)」

 軽いことは、人のために意味が在る。 

 

 

トイレスタンプ

「なぁトーヤ、ちょっと聞きづらいことなんだけどいいか?」

「ん?なんだいダイスケ君や」

 朝一の講義前、隣席を陣取っている友人であるトーヤに聞きたいことがあった。

「あんまり声張って話す内容じゃないんだけど、家のトイレの掃除ってどうしてる?長時間ブラシで擦るのが面倒でさ……」

 最近一人暮らしを始めてみて思ったことをこいつに尋ねてみる。俺よりも早く一人暮らしを続けているこいつなら何かいい案を持ってるかもしれないと思ってだ。

「あーそれねぇ。今はトイレスタンプっての使ってるかなぁ」

「トイレスタンプ?」

 聞いたことのない名前だ。

「そう。便器の内側に張る洗浄剤?みたいなものかな。タンク系じゃ無くても使えてブラシの手間がだいぶ省けるよ。届かないとこだけブラシを使えばいいから時間短縮にもなるし」

「ほうほう。そんなのがあったのか」

「色々なお店とか巡ってみるとね、面白い便利グッズとかたくさんあるもんなんだよ。最近はそれを探すのが趣味になってきたかもなぁ」

「そんなにかよ……とりあえず検討してみるわ。サンキュー」

「どいたま~」

 そして間もなく始まりを告げるチャイムが鳴った。

 

「ジョンソン スクラビングバブル トイレ洗浄剤 トイレスタンプ 漂白成分プラス ホワイティーシトラスの香り 本体 (ハンドル1本+付替用1本) 6スタンプ分 38g」

充電池

 僕は思うんだ。電池って便利だけど面倒くさい。

 様々な機械を動かすのに必要だけれど、基本使い捨てだ。値段はピンからキリまであるし買いだめもしやすい。そういった面では中々良いモノで便利だ。

 けど、使い終わった後が大変だ。地域によって出し方が違う。燃えるごみだったり不燃ごみだったり窓口回収だったり……それも電池の規格によっても変わってくる。僕はそんな面が面倒だと思っていた。

 そう考え始めるようになってから僕は定期的に買い溜めしておく分以外は充電池に切り替えていくことにした。充電池ならゴミに出す手間は最小限で面倒にならない。使いまわすようにすれば、不足することもまず無くなる。規格の不便さは市販の互換商品を使ってはいるけどね。

 それと、コンセントの一つが常に占領されてしまうがUSBポート付のものを利用することでなんとかなっている。

 もちろんこれは常に電気が通っている自分の家だからこそ、だけど。もしものために普通の電池はやっぱり必要だとも僕は思う。

 ――いずれは乾電池という形すらなくなるのだろうか。

 

「EBL 充電池充電器セット 8スロット充電器+単三電池(2800mAh*8)セット 単三単四ニッケル水素/ニカド充電池に対応 充電式電池・充電器パック」

 面倒は二通りある。これは愛すべきではない方だ。

 

 

マグカップ

 電気ケトルの中の保温してあるお湯をマグカップへと注いでいく。

 マグカップの中のインスタントコーヒーとクリープとが溶けて混ざり、独特の香りが鼻に届いた。そして夜の星空がプリントされていたそれはそのコーヒーの完成と共に姿を変える。この温度によってプリントされる絵柄が変化するマグカップは私のお気に入りの一つだ。

 お気に入りなのだが、私が猫舌なのでちょっと冷えて飲めるようになるまでしばし待機。そしてその間にコーヒーの香りを存分に味わう。私は飲めるようになったらすぐ飲み切ってしまうから、今だけの楽しみでもある。

 この猫舌も最初は不便としか思ってなかったけど、こうやって待っている時間に楽しむことが出来ると考えたら案外悪いモノでもないのかもしれない。

 そろそろ、頃合いかな。

 

「Yinghaitai 変色マグカップ 陶器 コーヒーカップ マグカップおしゃれ マグカップおもしろ 贈り物 プレゼント 350ml (太陽系)」

 変化を楽しむ。それは心の余裕から。